科学言説研究プロジェクト第4回公開研究会

「未発見動物の歴史―大海蛇殺しとしてのリチャード・オーウェン―」

日時:2007年12月9日(日)14:00 

〔報告〕下坂英(東洋英和女学院大学)

 

報告要旨:「大海蛇」(sea serpent)とは、昔から目撃談のある、巨大で細長い、未知の海洋動物である。この大海蛇について、19世紀にその実在性をめぐってイギリスなどで論争が起こった。この論争について、動物学者リチャード・オーウェンの主張などに注目しながら、見直してみたい。その後の、マスコミにおける大海蛇の取り上げられ方についても考えたい。また、日本では、なぜ大海蛇は話題にならないのか、皆さんのご意見もお聞きしたい。

※報告者は東洋英和女学院大学人間科学部教授。専門は科学史(特に地質学史)・科学論。論文に「未確認動物学」(科学見直し叢書1『科学と非科学のあいだ』木鐸社)、「進化論のプリンスの「受難」―スティーヴン・ジェイ・グールド」(『科学史の事件簿』朝日新聞社)、「日本において「創造論現象」は、どう理解されてきたか?」(「生物学史研究」第75号)などがある。

 

休憩(コーヒーブレイク)

 

「未確認動物の民俗学―忘れられたツチノコたち―」

15:30  〔報告〕伊藤龍平(南台科技大学)

 

一九七〇年代の未確認動物ブーム以来、ツチノコといえば「幻の蛇」というイメージが浸透している。しかし、ブーム以前のツチノコは、今日の定義でいう妖怪にあたる存在であった。本報告では、ブーム以前と以後のツチノコ像を、文献資料や民俗資料を用いつつ紹介・考察し、妖怪から未確認動物へという道筋を辿ってみたい。

※報告者は台湾・南台科技大学人文社会学院助理教授。専門は日本近世文芸・口承文芸。著書に『江戸の俳諧説話』(翰林書房)、論文に「ツチノコの本地―妖怪から未確認動物へ―」(「世間話研究」第10号)、「ツチノコ論序説―妖怪・幻獣・未確認動物―」(『日本人の異界観』せりか書房)、「ツチノコも繁殖する―「恐怖」から「愛玩」へ―」(『妖怪は繁殖する』青弓社)などがある。

16:30   討議(コメンテーター:齊藤純、菊地原洋平)

 

 


〔コメンテーター紹介〕

齊藤純(天理大学文学部教授)日本民俗学・民間説話研究

論文に「妖怪と怪獣」(常光徹編『妖怪変化 民俗学の冒険3』ちくま新書)、「法螺の怪―地震鯰と災害の民俗のために―」(筑波大学民俗学研究室編『心意と信仰の民俗』吉川弘文館)、「どうして桃太郎に出生地があるのか?」(小長谷有紀編『「大きなかぶ」はなぜ抜けた?―謎とき 世界の民話』講談社現代新書)などがある。

菊地原洋平(九州工業大学非常勤)科学史

論文に「パラケルススの植物観にみる形態と象徴―西欧近代初期における錬金術と本草学への一考察―」(「モルフォロギア:ゲーテと自然科学」第24号)、「西洋中世における架空種族論の集大成―ハルトマン・シェーデル,『年代記』(1493)の考察―」(「生物学史研究」 第76号)などがある。

本研究会は、日本科学史学会生物学史分科会の2007年度シンポジウムを兼ねています。関連論文が『生物学史研究』80号に掲載されました。




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